16歳のダイアリー

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内緒で訪ねようとしているなんて、 とても言えない雰囲気になった。 親父さんはわたしたちが、 何か迷っている風なのを、 気付いたからなのか、 そばのカウンターにある電話番号帳のようなものをぱらぱらめくりはじめた。 わたしはタクミさんの顔をちらりと見た。 タクミさんはやはりわたしを見て、 目をちょっと大きく開いて、 両肩を上げ下げし、 なるようにしかならないね、 みたいなポーズをした。 「もしもおーし。 忙しいとこ、 悪いね。 俺だよ、 蕎麦屋のヤスだよ。 親父さんいる?うん。 …。 あ、 なんだかそっちにお客さんだよ。 バイクで訪ねていく途中で、 この雨に降られて。 ウチで立ち往生よ。 ああ、 名前?聞いてないや」 タクミさんはあわてて 「桃川サイクルさんで働いている、 角谷さんを訪ねたくて。 俺、 高瀬って言います。 こっちは、 牧川さん」 わたしのことだ。 言ってくれてアリガトサン! 「そっちで、 角谷さんって人、 働いてる?あ、 そう。 その人に会いに来たんだって。 高瀬さんと、 牧川さんだって。 うん。 うん。 あ、 そう、 うん。 あ、 そうかね、 うん、 分かった。 待たせとくよ。 はいはい」 旦那さんは電話を切ってわたしたちを見て言った。
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