16歳のダイアリー

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「よく来てくれたわね。 こんな遠いところまで。 それに素敵なガールフレンド連れてきて」 と、 言いながら、 居間へと勧めてくれた。 なんだか居心地がいいよな、 悪いような。 立場的に…。 これってどうなのよ? 「文隆、 普段は学校行くから5時までなんだけれど、 今日は7時までの仕事なのよ。 でもせっかくだから早く帰してもらえると思うわ。 それまで、 お茶飲んで、 テレビでも見ていて」 と、 お母さんは気さくに言った。 若くてきれいなお母さん。 それが第一印象だった。 角谷さんへの思いも、 なんとなく変わって来た。 物理的には今近くにいる、 でも甲府の、 自転車屋さんで働いて、 学校も行って。 家族も助けていて、 やっぱり世界が違うって、 まざまざと見せつけられた気がした。 手紙に書いてあった通りだ。 体中でそれを実感した。 よおーく分かった。 少しはさっぱりしたけれど、 でもこれで終わりって簡単に忘れられそうになくて。 どっかでつながっていたいとか、 そんなセコイ思いがあった。 でもいい思い出として、 心の中にしまわなくちゃ。 そう言い聞かせた。
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