16歳のダイアリー

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 送ってくれたおじいさんにお礼を言い、 蕎麦屋さんの旦那さんにもお礼を言い。 なんだか皆さん、 お世話になりましたっていう旅でした。  いよいよ家の近くまで来た頃、 タクミさんは、 信号待ちの時振り返って 「角谷さんに会えて、 ほっとした?」 と、 聞いてきた。 なんだ、 昨日もそういったのに。 「うん。 ほっとしたよ」 「もう気持ち、 傾いてないの?」 「まあ、 正直、 すっかり忘れられたってわけじゃないですよ。 じっと見てると、 やっぱり素敵だし?。 カッコいいし?。 でも、 生活かかってるっていうの、 見せつけられちゃったもん。 恋愛どころじゃないよね。 ちゃらちゃらやってられないでしょ」 「ちゃらちゃらねえ」 「うん。 わたしたち、 親のことも、 経済の心配も、 将来もあんま考えなくていいっていうか。 そりゃ受験とか、 人間関係とか、 教師とのこととか、 部活のこととか、 確かに色々あることはあるけれど、 やっぱ角谷さんが直面している問題とは全然質が違う。 背負ってるもの違いすぎる」 「だなー。 確かに大人だよ」 そこで信号が変わる。 バイクは走りだした。 タクミさんは、 なにか言いたかったのを、 途中でやめた、 そんな感じだった。
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