16歳のダイアリー

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 背はあまり高くない、 髪の毛を、 後ろでしっかり結んでいたし、 制服をきちんと着ていたからか、 真面目そうに見えた。 会うといっつも笑っているような、 そんな顔立ちだった。 名前を知ったのはだいぶ後。 彼女がいるかとか、 前に誰と付き合っていたかとか、 そんなこと言うつもりもなかったのになんだかうまいこと誘導されて、 うっかりしゃべらされた。 でも、 本人は、 結構口が固くて自分のことはしゃべらない。 うまいな。 「1年なんでしょ。 見えないねえ」 「それ、 どういう意味ですかあ??2年生の高瀬タクミさん」 「だって、 ここ1年生、 あんまり寄り付かないじゃない」 「協議会の資料の印刷頼まれたから」 「協議委員なんだ」 「はい」 「菅野、 自分で印刷やんないの?1年にやらせちゃってて」 離れたところにいた菅野に聞いた。 奴は振り返って 「わりいわりい、 牧川さん。 次回は俺ら、 執行部の人間がやるからさ。 今月、 頼むよ。 明日までに作らないといけないから。 今ホラ、 部の予算委員会の資料作りに追われててさ」 「いいですよ。 今日、 暇だし」 と、 その子はニコニコしながら答えていた。 牧川さん、 それが彼女の名字だった。
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