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シャキン、シャキンと大振りの鋏を数回、動かして口の裂けた顔をジーッと近寄らせて、尻餅をついてガタガタと歯をかち合わせる、少年はジワーッ下半身を濡らした。あまりの緊張でお漏らしをしてしまったらしい。クスッと彼女は笑い。
「いい? また、あの子をいじめるようだったら、お姉さんと同じような顔にするからね。返事は?」
「は、はい。ごめんなさい」
「私じゃなくて、あの子に言うべきよ。ごめんなさいってね」
彼女は少年の襟首をグイッと掴むと、背中を押した。両足をワタワタ、動かしながら歩いていく、少年を見送りながら彼女は言った。
「ちゃんと謝らないといけないわよ。私はどこでも貴方のことを見ているからね」
夕暮れ時が過ぎていき、彼女が存在していられる時間がなくなって、彼女、口裂け女の時間が終わる。
「仲直りできるといいなぁー」
最後に彼女はそう呟いて、暗闇に消えていった。
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