序章

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  無様に横たわる数名。 荒い呼吸だけが響く、倉庫の中で。 横たわり動かぬ数名の間(ま)を、縫うように注意深く歩み寄る。歩み寄った先にあるのは、段ボール箱が一つ。乱雑に梱包されているが、空気穴が幾つか開いている。 呼吸を調えながら、ガムテープを引き剥がしていく。箱を開ければ、両手首と両足首にガムテープで縛られていて。猿轡(さるぐつわ)をされた少女が一人、箱の中から現れた。 猿轡と両手両足首のガムテープを、丁寧に迅速に剥がす。 「ありがと。」 嗚呼、彼女は気弱だから同じ手に引っ掛かるんだ。 今回も、塾の帰りにSPを撒(ま)いて一人で歩いていた時に、襲われている。彼女は、何度も襲われては箱の中に入れられて梱包されていく。常に同じ手に引っ掛かる。彼女は、必ずSPを撒くのは、籠の中の鳥になりたくなかったから。 籠の中の鳥だからこそ、安全だと言うのに。 携帯電話で彼女の親に連絡して、デジカメで証拠写真を撮(うつ)して。彼女は、SPに囲まれながら帰路に就くのだろう。 半分泣きそうな彼女を見遣りながら、次の一手を考えた。軽く昏倒しただけで、あっさり負けてくれた数名のオジサン達。何処か痛むのか唸っているだけの所に、慎重に歩み寄る。ポッケから身分証明書である、免許証等を見つけてはデジカメで撮影。 これもまた立派な物的証拠になる。  
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