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暑い。
この国の風情溢れる四季は嫌いではないが、夏になれば冬が恋しくなるものだ。
小高い道を歩きながら振り返る
眼下に広がる町は初夏の気だるさを感じさせるように色調が淡い
風が髪をなびかせる
私は少し強い癖っ毛のある前髪を掴んだ
すこし伸びすぎか?散髪にいかなくてはならないかもしれない
「先生ーまだ着かないんですかー・・・」
後ろから疲弊しきった兵士のような面持ちの女の子が私に声をかける
まだ歩きはじめて10分やそこらだ
普段から運動を怠っている証拠だな、と思うと少しからかいたくなった
「そういえば春ちゃん」
「はい?」
「最近急に大人っぽくなったよねドキっとするくらい」
「・・・え?」
女の子は驚いたのか完全に停止したあと私をぽかんと見ている
「毎朝私は君に会うと・・」
「え?・・え?」
動揺しているのが手にとるように分かる
手を自分の前で繋いでうつむいてしまった
「相撲取りに会ってしまったのではないかとドキっとするよ。張り手をくらうんじゃないかって心配になる」
「・・・・・」
それまでもじもじしていた女の子は一瞬にして表情を消す
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