序章

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「大きいお屋敷ですね」 「そうだな」 「夜には来たくありませんけど・・・」 彼女は辺りをきょろきょろと見回してぼそりと呟いた 踏み分けられた草が道なりに玄関へと続いている どうやらいつもそこを通っているらしい すると急に怒声とともに玄関が開かれた 「もういい!うんざりだ!君に・・っ」 私たちに気づいたのか途中まで叫んだところで止めてしまった 出てきたのは白髪混じりの壮年の男だった この家にはそぐわないピッシリとしたスーツを着ている 「・・・失礼させてもらう!」 男は私たちに一瞥をくれると慣れた様子で踏み分けられた草道をドシドシ歩いて帰っていった はて?タイヤの跡は見られなかったが彼も徒歩で来たのだろうか そう考えていると玄関からひょいと女が出てきた 「あら。どなたかしら?」 長い黒髪を体ごと斜めに垂らした端正な顔立ちの彼女はニコっと笑った 男ならそれだけで破顔してしまいそうな魅力的なものだった すると後ろから思いきり背中を叩かれた 慌てて咳払いをして誤魔化す どうやら私ももれなく破顔してたらしい
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