『新聞部長についての考察』

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部長はパソコン画面に集中していた。 彼の背後まで辿り着ければ、あのパソコンの中身が見える。問題は、部長に気付かれずに辿り着けるかって事だ。 辿り着ければボクの勝ちだ。考察通りなら、間違いなく彼はーーー。 「…………そこにいるのは誰?」 部長がこちらを見ている。ええ!?もう見つかったわけ!? 息を詰めてそっと部長を伺うと、部長の視線が僅かにズレている事に気付いた。 …………よし、見つかったのはボクじゃない。呆れた顔でまだ空き教室前にいる穂村でもない。 …………じゃ、誰だ……? 気になる。…………部長が隠しているパソコンの中身より気になるよね。 ボクは人の知らない新しい事実を知る事が大好きだ。それは他人の秘密を暴くのと同じ事で、褒められた行為ではないのも分かっている。 だけど、ボク自身は秘密が好きな訳ではない。別に秘密であろうが無かろうが、興味を持ったらただ知りたい。 とにかく知りたいんだ。 そして、知ったからってその先に興味がある訳でも無い。知ってしまえば満足する。気持ちがゆったり落ち着いて、素晴らしい充足感。 そう。次のターゲットを見つけるまでの、ほんの僅かな間だけ。 裏新聞はそんな過程から出来上がった訳だけれど、決して暴露新聞ではない。掲載にあたっては、必ず本人の了解も得ている。 だから取ったスクープ全てを載せている訳でも無い。裏新聞は、みんなが幸せになるようなスクープを!が目標なのだ。 ボクの興味は尽きることが無いらしい。直ぐに新しいスクープを探しに飛び出してしまうのだから、これはもう性分だと自覚している。 「君は…………どうして君が…」 ん?部長の知り合い?ボクは穂村に回り込めとジェスチャーを送った。 おい穂村、ダルそうに無視するなよー。
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