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いのり、と彼が僕に言う。
「……どうして、他の男に触らせたりした?」
彼は僕の下肢を跨ぐ形で膝を着き、色のない声を紡ぐ。世界に彼と僕しかいないかのような静寂が、寝室の中を埋め尽くしている。
「いのりは、誰のもの?」
答えは決まっていた。もう、何年も前から。
「あなたのもの、です」
「最初の質問については?」
僕は、それに答えることができなかった。
もちろん、合意の上でしたことではない。でも僕は、撮られた写真のことを思い出して、抵抗の手を一瞬緩めてしまった。
本気で抵抗することができていたら、あんなことにはならなかったかもしれない。
嵐君を守りたかった。
ただ、それだけだったのに。
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