第1章

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 「どうしたの? 何か困ったことでもあった?」  「ううん。別に」  はあ……口にするのも面倒よ。  「そう?」  「あ、それより、智哉君。リビングで座ってて。すぐにお茶を持っていくから」  「あ、気にしなくていいよ。どうせ通り道だし」  「いいから、いいから。昨日夜更かししてたから、3人ともまだ寝てるみたいだし」  「じゃあ、お言葉に甘えようかな」  そう言ってくれた智哉君をリビングに案内して、お茶を淹れる。  はあ。こんなふうに静かな時間なんて、久しぶりだわ。  「かなたちゃんて、お茶を淹れるのがこんなに上手だったんだね。知らなかったよ」  やだ。智哉君に褒められちゃった。  「おばあちゃんに教わったの。おばあちゃんは、紅茶も日本茶、お抹茶も上手に入れてくれたのよ」  「そうなんだ? そんなおいしいお茶が毎日飲めたなんて、透さんは幸せな人だな」  おじいちゃんって言えば……。  「ねえ、智哉君。魔物を封印する方法、見つかった? 前、そんなこと言ってたよね」  「それが、やっぱり透さんはすごいね。わかったような気がしたんだけど、全然足りてなかったみたいだよ」  ふーん。智哉君でもわかんないことがあるんだ。  「難しいのね、魔物を封印するって」  「そうだね。もともと違う世界で生きているものに力を及ぼすわけだから、動物を相手にするように単純にはいかないね」  そっか……。あの子たちって、違う世界の生き物なんだよね。あんまり普通にいるから、忘れてたけど。それなのに、そんな3人をあっさり封印しちゃったおじいちゃんって……。  「おじいちゃんって、すごい人だったんだ」  「そうだね。本当にすごかったと思うよ。でも、僕なら……」  「智哉君なら?」  どうしたのかな? 智哉君、すごい真剣な顔してるけど……。  「あ、いいや。その話はまた今度ね」  「うん。いいけど……」  智哉君、変なの。  「それより、あいつらはどう?」  「あの3人? 常識知らずなのは相変わらずだけど、それなりにうまくやってるわよ」  前ほど家の中をメチャクチャにすることもなくなったしね。  「本当? 困ってることはない?」  ふふふ。智哉君って、本当に心配性なんだから。  「大丈夫よ。あの子たちも、現代の生活にちょっと慣れてきたみたいだし」
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