第1章

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 トースターや給湯器や全自動洗濯機の使い方も覚えたし、電子レンジも使えるようになったし。  それでも、たまにびっくりするような失敗をやらかしてくれるけどね……。  「それはよかったけど、変なことされてない?」  「変なこと?」  「ほら、魔物は情熱的すぎるから」  「ああ、それも大丈夫よ。もう慣れちゃった」  ロイもユーゴも、子犬がじゃれついてきたとしか思えないものね。  フロリアのくさい台詞だって、もうさらっと流せちゃうわ。  「慣れたって、かなたちゃん……」  「本当に平気よ。いざとなったらペンダントもあるしね」  おばあちゃんがくれた不思議なペンダント。これさえあれば、あの3人なんて全然怖くないもの。  「だから、余計に心配なんだ。そうやってペンダントを過信していて、いざという時に外していたらどうするんだい?」  「大丈夫よ、本当に。だから、こうやっていつも見に付けてるわけだし」  「でも、ほら、時には、外すこともあるだろう?」  あら? 智哉君、急に言いにくそうになったりして、どうしたのかな?  「おやおや。これは、とんでもないナイトが一緒ときたもんだな」  「あら、フロリア。もう起きたの?」  暖かい紅茶を差し出すと、なぜかフロリアはそれを持って智哉君の隣に座った。  「おかえり、かなた」  「わざとらしい男だな」  「そういう君こそ、心配するふりで何を想像していたんだい?」  「僕は純粋に心配しているだけだよ。なんでも邪推するような奴が、彼女の返事を自分に都合のいいように解釈しないか、ね」  「僕も心配だよ。自分の欲望も肯定できないくせに、他人のことばかり疑っている狭量な男が、勝手な思い込みで暴走しないか、ね」  「ちょっと、2人とも」  こんな険悪なムードになったりしたら、他の子たちが起きてきちゃうじゃない。  「やっぱり君をこんな家に1人でおいておくわけにはいかないよ。おばさんに事情を話して、平日はうちにおいでよ」  「へえ。“実家に帰って”じゃなくて、君の家とは、本当にとんでもないナイトだな」  「私は、この家が傷まないように住んでいるんだから、智哉君の家にも行けないし、実家に帰るわけにもいかないわよ」  だから、この話はもうおしまい!  「そんなこと、週末だけ手を入れに来ればいい話じゃないか」
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