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「それも悪くないね。実家から、毎週僕の元に来てくれるなんて、素敵だよ。実家なら、胡散臭いナイトも簡単には上りこめないしね」
「3人だけにしておいたら、無人にしておくより早く壊れるわよ。まさか、智哉君が3人の面倒を見てくれるわけじゃないんでしょ?」
「ちょっと待ってくれよ。こんな男と同居なんて、考えただけでゾッとするよ」
「それは、こっちの台詞だな」
「でしょ? だったら、今までどおり私がここで暮らすしかないんだから、この話はおしまい」
もう。2人とも私の迷惑も考えてよね!
ロイやユーゴが起きてきて大騒ぎが始まったら、面倒なのは私なのよ。
「だけど……」
「未練たらしい男だな。同じ人の身でも透とはずいぶん違う」
うわっ。きっつ~。
フロリア、いくらなんでもそれは……。
「……」
ほら、智哉君も悔しそうに黙り込んじゃったし。
「智哉君」
フロリア、ちょっと言いすぎよ。
そう思いながら睨みつけたけど、フロリアには効果なし。
「さて、どうやら君は僕の肩を持ってくれるつもりはないみたいだから、僕は独り傷心を慰めてくるよ」
なんてしれっと私にまで嫌味を言って、クルッと背を向ける。さすが、何百年も生きてると、神経も太くなるものね……。
「僕も荷物を届けに来ただけなのに、ずいぶん長居してしまったし、僕はこれで帰るけど、くれぐれも気をつけてね」
うーん。でも、智哉君も負けてないのかな? あんな強烈な嫌味からこんなにすぐに立ち直るなんて。
「心配してくれて、ありがとね。でも、本当に大丈夫よ」
「僕のうちななら、母さんも君のことを気に入ってるし、いつでも大歓迎だから」
「本当にありがと」
「ふっ。本当に諦めの悪い男だな」
「フロリア! もう、そんなこと言いにわざわざ戻ってこないの!」
「はいはい。じゃ、僕は失礼するよ」
強い口調で言ったつもりだったのに、フロリアはなんだか楽しそうな顔をして立ち去っていくだけ。
もう。ちょっとぐらい反省したらかわいいのに!
そうやって、むくれる私に、智哉君はクスクスと笑った。ついついつられて私も笑ってしまう。そして、私たちは並んで玄関へと向かった。
「じゃあね、智哉君。荷物ありがと」
「ああ、また明日、くどいようだけど、本当に気を付けてね。相手は魔物なんだから、常識は通用しないから」
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