第1章

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 「そう、か。それで近頃は手作りお菓子を持ってきてくれないんだね 」  「うん、ごめんね」  「次は、僕の分をちゃんと隠しておいてね。僕はかなたちゃんのお菓子のファンなんだから」  すごく寂しそうな顔。  そんなに私のお菓子が食べたかったなんて知らなかった。  「とびきりおいしいのを作るからね!」  「ふふ、楽しみしているよ」  そう約束はしたものの……。  あの子たちからお菓子を守りきることが、できるかな?  「ごちそうさまでした」  「はい、おそまつさまでした」  「どうだい? 味のほうは」  「とっても美味しかった! おじさま、お店を開けるんじゃないですか?」  「たしかにうまかったけど、それは言いすぎなんじゃないか?」  「そんなことはないわよ。智哉君も少しは見習ったほうがいいじゃない?」  「ははは。こういうのは女の子の方が正しいことをいうもんだぞ? 智哉」  今日は智哉君のおうちにお呼ばれ。  智哉君のパパが、手打ちうどんを作るから、食べにおいでっていわれたの。  おじさまはうちのパパと違って、料理が得意。  昔から凝ったものを作っては、家族でごちそうになっていたっけ。  今日はママの都合がつかなくて、私ひとりで来たんだけどね。  ……さすがに、あの子たちは連れてこれれないわよねえ……。  「父さんはいつだって女の子には甘いんだから」  「そりゃあ父さんは一緒に料理ができる女の子が欲しかったからな」  「あら、女の子なら間に合ってるわよ、ねえ?」  え?  「まあ、娘のようなものだしな」  え、ええ?  「父さんも母さんも! ……ねえ、もう僕の部屋に行かないか?」  「でも、後片付けを手伝わないと……」  「そんなのいいから。さあ、行こう」  「まあ、独り占めするつもり?」  「ずるいぞ、智哉」  「いいからっ! もう……」  ふふ。いつだってクールな智哉君も、ふたりにかかれば形無しね。  「しょうがないわね。ここはいいから、智哉につきあってあげて」  「ごめんなさい! じゃあ、甘えさせてもらいます」  「ゆっくりしていきなさい」  「はい。ごちそうさまでした、おじさま」  「ほら、早くっ」  智哉君に追い立てられるようにして、私はダイニングを後にした。  私を自分の部屋に放り込んで、智哉君はまたダイニングに戻っていった。
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