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「そう、か。それで近頃は手作りお菓子を持ってきてくれないんだね
」
「うん、ごめんね」
「次は、僕の分をちゃんと隠しておいてね。僕はかなたちゃんのお菓子のファンなんだから」
すごく寂しそうな顔。
そんなに私のお菓子が食べたかったなんて知らなかった。
「とびきりおいしいのを作るからね!」
「ふふ、楽しみしているよ」
そう約束はしたものの……。
あの子たちからお菓子を守りきることが、できるかな?
「ごちそうさまでした」
「はい、おそまつさまでした」
「どうだい? 味のほうは」
「とっても美味しかった! おじさま、お店を開けるんじゃないですか?」
「たしかにうまかったけど、それは言いすぎなんじゃないか?」
「そんなことはないわよ。智哉君も少しは見習ったほうがいいじゃない?」
「ははは。こういうのは女の子の方が正しいことをいうもんだぞ? 智哉」
今日は智哉君のおうちにお呼ばれ。
智哉君のパパが、手打ちうどんを作るから、食べにおいでっていわれたの。
おじさまはうちのパパと違って、料理が得意。
昔から凝ったものを作っては、家族でごちそうになっていたっけ。
今日はママの都合がつかなくて、私ひとりで来たんだけどね。
……さすがに、あの子たちは連れてこれれないわよねえ……。
「父さんはいつだって女の子には甘いんだから」
「そりゃあ父さんは一緒に料理ができる女の子が欲しかったからな」
「あら、女の子なら間に合ってるわよ、ねえ?」
え?
「まあ、娘のようなものだしな」
え、ええ?
「父さんも母さんも! ……ねえ、もう僕の部屋に行かないか?」
「でも、後片付けを手伝わないと……」
「そんなのいいから。さあ、行こう」
「まあ、独り占めするつもり?」
「ずるいぞ、智哉」
「いいからっ! もう……」
ふふ。いつだってクールな智哉君も、ふたりにかかれば形無しね。
「しょうがないわね。ここはいいから、智哉につきあってあげて」
「ごめんなさい! じゃあ、甘えさせてもらいます」
「ゆっくりしていきなさい」
「はい。ごちそうさまでした、おじさま」
「ほら、早くっ」
智哉君に追い立てられるようにして、私はダイニングを後にした。
私を自分の部屋に放り込んで、智哉君はまたダイニングに戻っていった。
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