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智哉君は優しくて、面倒見がよくて、誰からも好かれて人気者で……。
――それが『僕』だからね。
教室に帰る道すがら、私は智哉君の言った言葉の意味を、ずっと考えていた。
「きゃあ!」
昼休み。お弁当を取り出したら一緒にかばんの中のものを落としてしまった。
「ほら、大丈夫? ……へえ、あんたでも本なんか読むんだ」
「もう、美琴ちゃんったらバカにしないいでよ。私だって本くらい読むんだからね」
美琴ちゃんが拾ったのは図書館から借りた『虹色の王子様』という本。すてきな話だったので、昨日は読みながら泣いてしまったくらい。
「はいはい、返したげる。でも、あんたはほんとに王子様が好きだねえ」
「だって、私の夢だもの」
そう。
おばあちゃんが教えてくれた。いつか現る、私の王子様。
いつもママにバカにされちゃうけど、私はずっと待っている。
「ふ~ん、で、3人のうちどいつなのよ?」
突然、美琴ちゃんがニヤニヤしながら聞いてきた。
「え?」
「あの魔物のうち、あんたのお眼鏡にかなった王子様は?」
「もう、美琴ちゃんったら! あの子たちはそんなじゃないわよ!」
そう、あの子たちは……王子様というよりは、手のかかる子供?
「そうだね、魔物が王子様なんて、聞いたことがない。王子様が魔物に変えられしまっているなら、まだしもね」
私は驚いて振り向いた。智哉君だ。
「智哉君、いつの間に?」
「僕だって昼休みだからね。……これは?」
智哉君は私の手の中の本を見て、顔をしかめた。
「すてきな本なの、私少し泣いちゃって……」
――その王子様は、唯一の友達の白い小鳥と一緒に虹の上に住んでいました。とても穏やかで幸せな時間が流れていたのだけれど、王子様はふと虹の外の世界が気になります。
世界にはもっと楽しいことがあって、もっと愉快な友達がいるはずと、一人で旅に出てしまったのです。
王子様は世界中を旅して沢山の友達を作って、また虹の上に戻ってきます。それから王子の元へは、毎日新しい友達が訊ねてきます。
虹の上で、ずっと、ずっと待っていてくれた小鳥のことは放ったらしにしてしまって、王子は新しい友達に夢中になってしまいます。
しばらくして、王子との遊びに飽きた友達は次々と家に帰ってしまい……。気がつくと、王子の傍らには小鳥が寄り添っていました。
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