序章

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 私はみずほの言葉が気になり、どうして磐城君を好きになったのか聞いた。 『あれはそう、確か入園式の翌日だったかな? その日から昼寝があったから布団など待って来なくてはいけなかったの。でも彼は覚えていなかった』 みずほは磐城君との保育園の頃の思い出を語り始めた。 磐城君は全て忘れていて、みずほの記憶を話したらしい。それ程みずほにとっては忘れられない出来事だったのだ。  磐城君のお祖母ちゃんは昔使っていた乳母車に昼寝用の布団を積んで保育園にやって来て、保育士にある荷物を頼んで帰ったようだ。 それがみずほにとって最大の汚点になったとのことだったのだ。  『いわきみずほちゃん居ますか?』 そう言ったのはカッコいい男性の保育士だ。 『ハーイ!』 みずほは嬉しくなって大きな声を出した。 『はい。忘れ物だよ』 その言葉に何だろうと思いながら荷物を開けてみると、中から大量のオムツが出てきたそうだ。 みずほは真っ赤になり、泣き出した。 『オムツなんてもう卒業したもん』 小さな声でそう言いながら……  カッコいい保育士に笑われた。そのことがみずほの心を傷付けた。 そして…… あまりにも泣き過ぎて……お漏らしをしてしまったのだった。 久しぶりの失敗にみずほは戸惑い、余計に泣き出してしまった。 でも磐城君にそんなこと解る訳がない。 その時磐城君は、近所の友達とおもちゃの取り合いをしていたのだった。 だからそれどころではなかったのだった。 カッコいい保育士はみずほのお漏らしに気付き、すぐにみずほにオムツをあてがえた。  『良かったね。お祖母ちゃんにありがとうだね』 保育士はそう言いながら、みずほを抱きかかえだ。 『ミーちゃんのじゃないのにー!』 みずほは余計になきだしてしまったのだった。 『いわきみずほちゃん、居ますか?』 余りにみずほが泣くので保育士はもしやと思い部屋の中で遊んでいた園児に声を掛けてみたようだ。 その時。磐城君が手を挙げた。そう二人とも名前がいわきみずほだったのだ。 みずほは磐城君を睨んだ。 そのことで磐城君はみずほを恐い女の子だとインプットしてしまったようだ。 そんな二人が何故恋人同士に? やっぱりそれは私にも謎だった。 キュンバクのなり染めは良く解らないかったがみずほと磐城君は近距離恋愛の真っ最中だったのだ。  エースと私の交際は順調だった。 そんなある日、みずほが瑞穂君から貰ったと言って、コンパクトを見せてくれた。どうやら瑞穂君は学校には内緒でアルバイトをしているようだ。 それが何なのか判らないが、きっとヤバい仕事かも知れないと思っていた。でも喜んでいるみずほに対してそんなこと言える訳がなかった。 みずほはコンパクトで化粧する訳でもなく、鏡越にラブコンタクトをしているらしい。 つまりウインクだ。 私はみずほの行為が羨ましくなって、彼に手鏡をねだってみた。 そして私もみずほを真似てみた。すると彼が顔を赤くしながら喜んでくれた。 私達もみずほと磐城君のようにラブラブになれたのだ。
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