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岸本は、泣いていた。
あの日と同じように、泣いていた。
そして俺も。
でも。
「俺は、この過ぎてしまった時間を受け入れる……受け入れるよ、岸本」
だからお前も受け入れるんだ。
どれだけお互いに想っていても、俺たちはすれ違ってしまった。
お前は新田を選び、俺は逃げる事を選んだ。
その事実は決して消えないし、消してもいいものじゃない。
だから。
終わらせなきゃ、ならないんだよ。
ごめん、と。
ありがとう、を。
何度も何度も繰り返す。
泣いて体を震わせる岸本を強く抱き締めながら、何度も。
岸本は、俺をふらなかった。
きっと、口に出来なかったんだろう。
それでも。
それでも。
これで、終わったんだ。
本当に。
この終わりがなければ、始まりも来ないから。
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