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「そういうお前はどーなんだよ!」
自分から話を逸らしたい気持ちが強くて、つい大声を張り上げてしまう。
岸本はキョトンと目を丸めた後、さも当たり前のように大きく頷いた。
「そりゃ、思春期の男なら好きな奴の一人や二人いるでしょ」
「二人もいねぇわ!普通一人だろ!」
岸本のおかしな発言でさらに声のボリュームが増す。
好きな奴が一人や二人?
こいつ、そういう奴なのか!?
先生を一途に思って来た自分としては、恋愛にルーズな人間が大っ嫌いだ。
本気の恋を知ってしまったいま、それがどんなに大変なことで、
そしてどれほど大事なことなのか知っている。
簡単じゃない。
適当じゃ済まされない。
そんな気持ちを遊びで考えるような奴は、大嫌いだ。
「なにマジになってんだよ、春山。可愛い女子に憧れるのなんて誰でもあるだろ?」
なんだ。
憧れ、ね。
岸本の言う一人か二人が憧れという対象だと知り、内心ホッとした。
岸本がいい加減な奴じゃなくて良かった。
本当に。
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