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その日を境に。
岸本はまた、俺の世界から出て行った。
友達に戻る事は出来なかった。
当たり前だ。
想いはまだ、ここにある。
まだこの、胸の中に。
「…………岸本に告ってさ、ちゃんと終わらせた」
あの日新田が飲んでいた紙パックのオレンジジュースを飲みながら、俺は隣に座る玲二にポツリポツリと話し出す。
「ちゃんと……決着つけたよ」
「…………そうか」
玲二はやっぱり、深くは聞いて来ない。
それでも、全てを分かってくれているような気がした。
いつも側にいてくれて、本当にありがとう。
「……今度、香川に教えてもらった丼の店、一緒に行くか?」
「…………麺じゃなきゃヤダ」
「は?丼だろ、そこは」
「嫌だ、麺!」
「ふざけんな、バーカ!」
「そっちこそふざけんなよ!」
下らない事を言い合って、自然と笑い声がこぼれる。
こうやって少しずつ、心の傷は癒されて行くんだろう。
今なら、天堂先生にも会いに行ける気がしたけれど。
それももう、卒業だ。
俺はもう、大丈夫。
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