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天堂先生と別れて自主練を切り上げた俺は、帰る支度をしたあと校門の前に立っていた。
こんな風にして、最近ある人物をずっと待っている。
何となく気が合って。
何となく、タイミングも合って。
何となく。
本当に、何となくーーーー
「ーーーー春山っ」
後ろから聞こえた声に、俺は瞬時に振り返る。
手を振りながら嬉しそうに駆けて来るその姿は、人懐っこい大型犬みたいに見えた。
「よぉ、岸本」
「悪ぃ、待った?」
「ううん、いま来たとこ」
そう答えると、爽やかな笑顔が頭の上から降って来る。
岸本晋太郎。
同じ二年で、バレー部レギュラーで。
でもって、俺と同じように毎日自主練に励んでいる。
「うし、帰るか」
「おう」
こうやって、何となく帰る時間が一緒になってからは、示し合うわけでもなく自然と一緒にかえるようになった。
岸本とは色んな話をする。
部活の事は勿論、学校のこと、好きなもの、嫌いなもの、
よく見るテレビに、休日の過ごし方。
そして。
「あれ出たろ?新発売の……」
「メロン味の餅カステラ!」
「そう!それ!」
お互いお菓子が大好きで、新発売と聞けばすぐさま飛び付いてしまう。
そんな岸本と一緒に帰るのは、本当に何となく。
何となく。
楽しんだ。
うん。
すごく、楽しい。
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