俺とあいつ。

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「嫌なことって、なに?」 ああ。 今度はそっちに興味が移動しましたか? 「ーーーーッいいからもう、頭撫でんなよな!」 怒鳴って言ったあと、俺は踵を返して大股で歩き始めた。 無神経! マジで無神経だ、こいつ! 腹を立てる俺の横に、岸本はすぐさま追いついて来る。 この身長差だし、一歩の大きさがあまりにも違うのは分かりきっている。 「何だよ、春山。そこまで嫌がるってことは、女か?女関係?」 「うるさい、うーるーさーい!」 「あ!あれだ!好きな女に春山君て弟みたい~って頭撫でられてたとか?」 ズケズケと心の奥に踏み込んで来る岸本は、あながち外れていない言葉を俺に直接ぶつけて来る。 『 ガキ 』 そう言った先生は、いつも優しく見守る保護者の目をしていた。 ああ、届かないな、と。 あの笑顔を見るたびに、感じていたっけ。 もう、消化した。 消化した、けど。 今でも不意に、思い出すんだ。 俺がもう少し大人だったら、何かが少しは違っていたんだろうか?って。 まぁ。 実際、きっと何も変わらないけどさ。 「ーーーー…………ごめん」 不意に吐き出された謝罪の言葉に、びっくりして岸本を振り返る。 申し訳なさそうな顔の岸本は、何かが言いたげな目で俺を見つめていた。 「泣きそうな顔させて、ごめん」 「…………」 だから。 一言、余計なんだよ。 本当、無神経。
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