転校先が異常

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春風が草木を揺らし、鳥たちの楽しそうな合唱が聞こえてくる。 だが、ここは森でも、ましてや山なんかではない。 校庭、である。 異様なまでに広いその中心にある、豪華な紋の描かれた噴水や、あちこちに置かれた、パラソル付きの休憩スペースは、お嬢様宅の庭として誰もが思い浮かべるようなものだった。 ここ、杉乃宮学園は、その美しい校舎や、お嬢様学校のような雰囲気のある事が主な要因とされるが、共学であるにも関わらず、全校生徒が女子しかいないという特殊な場所である。 そんな学園を俺――野脇拓斗が選んだのは、別に、ラノベによくあるようなハーレム状態を望んでいたわけではない。 いや、むしろその逆にある。 俺の目的であり、誓いであるそれは――人と関わらないこと。 女子の中に男子一人。 しかも転校生。 あとは第一印象を悪くすれば、目的を果たすための条件は揃う。 にやり…… つい口元がニヤついてしまう。 しかし、孤立した生活を送るという願いは、始まって早々に叶わないものとなるのだった。 面倒で厄介で最悪な、俺の転校生活が、始まる。
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