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「実はさ…」
「目当ての女がいるんだろ」
渉の言葉を俺はすかさず遮った。そんなコト、言われなくても分かるっつーの。
「!?何で分かるんだよ?」 …最近、渉は天然なんじゃないかと思う。昨日今日の付き合いでも無い俺達の仲で、分からなかったら只の馬鹿だ。
「渉、行動に出過ぎ」
半ば呆れた表情で溜め息を吐いた俺に、渉が両手を合わせて拝む様なポーズを取った。
「ヒロ、頼む。協力してくれ」
「…そんな事だろうと思ったよ。んで?その相手はドコにいるんだよ?」
兎にも角にも、この目で渉の眼力を確かめなくては。そう思った俺は、渉を促しながら電車に乗り込んだ…直後、駅のホームに発車を知らせる音楽が鳴り響く。
ガタン。
俺と渉を乗せた電車がゆっくりと走り出した。
『で?どれだよ?』
『彼女に対してどれって言い方ないだろ?』
電車の走る雑音を聞きながら、会話は続く。
「…!!」
やがて、渉に緊張が走った。俺に小さな声で『後ろ』と繰り返している。…要は灯台もと暗しってコトだ。
『近過ぎて見れねえよ』
渉に告げた瞬間。
――ガタン!
電車が激しく揺れた。思わず背後の人物にぶつかられる。
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