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ふわり。
長い髪がゆらりと揺れて柑橘系シャンプーの香りが辺りに漂う。セーラーカラーの襟元が清楚な感じの女の子――、それが彼女(渚)の第一印象だった。
「いつもこの時間にこの車両に乗りますよね?」
渚が俺(だよな?)に話し掛けて来た。
「ああ。そうだけど…」
真っ直ぐな瞳が俺に向けられている―――…。激しく脈打つ心臓の音が彼女に聞こえはしないかと心配しながらも、平静を装って答える。しかし、何故…彼女が俺を知っているんだろう?という疑問が頭を過る。 「あの、……!?」
何かを言い掛けて言葉に詰まった彼女は、車内の何処かを見て青ざめ始めた。 「どうした?」
「あ…あの~」
彼女の様子がおかしいので心配になって声を掛けた…が、返事は無い。歯をカチカチ鳴らしながら唯震えているだけだ。
そこへ、眼鏡っ子が控え目に話し掛けて来た。
「実は、渚ちゃん…。学校の行き帰りの時に、知らない人に尾けられてるみたいで…」
眼鏡っ子は彼女を気遣って毎日登下校を共にしているらしいのだが、渚よりも小柄で見るからにひ弱な為に護衛にまでは至らない様だ。
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