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そういえば、雀から話があってここに訪れていたことを思い出す。
しかし、話というのは悠一のことではないのか?と頭を傾げていると、注釈を入れるように雀は付け足して説明する。
「日笠くんのことは確かに話に入っているが、今回はその先の話をするんだ」
悠一が魔法少女をしていて、尚且つこの水無月支部に転属することになった。それから先の話があるとは考えが付かない。
というか魔法少女をしている時点で、色々とついていけてない。
「本部の意向で、日笠くんの存在を水無月支部外に公表しないという決定が下された。あんたに話って言うのは、日笠くんのパートナーとしてあんたが受けることとなった」
「パートナー、ですか?」
それは願ってもない事だった。
普通魔法少女として活動する時は単独が多いが、『盗魔』が大量発生した場合や、強力な『盗魔』が出現した場合により、複数人で行動する事がある。
それらの事例が無いにも関わらず、二人一組で行動するなんて余程の特例だろうと、纏は推理している。
「そう、役割は主に転属した日笠くんの教育係であり、別支部の魔法少女に対する監視役だよ。まぁ本部直々の任命だからね」
「ほ、本部からですか……」
それを聞くと、一層責任感が増す。全面的に信頼しているゆえの指名なのかわからないが、わざわざ任命してくれるのなら纏もやる気が違ってくる。
「是非ともやらせていただきます。この逢原纏、務めさせていただきますよ!」
びしっと、軍隊の敬礼ポーズで宣言してみせるが、その言い方だと何やら失敗しそうで悠一は何故か不安が残る。
一年目の新米でありながら水無月支部のエースとは言うが、学校生活や普段の様子から鑑みても、エースというには少し名ばかりではないかと思う。
どんな魔法を使うか、どういうタイプの魔法少女か定かでないにしろ、悠一は彼女の実力を軽んじて見ていた。
そんなわけで、
水無月高校転校生にして魔法少女の日笠悠一が、
水無月支部の魔法少女として転属することとなった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
悠一に対するアプローチのせいで、とんでもない噂が流布されてるということで、纏は休日を返上しつつ、同じクラスメート全員に誤解を解くために奔走した。
勿論水無月町だけに留まらず、隣町やそこそこ大きい市街にもクラスメートの家がある為、そちらにも抜かりなく足を運んで誤解を解いて行った。
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