逢原纏は魔法少女である

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「(……まぁ、俺の正体が解ったところで、もう拒絶する意味もあるまい)」 それに、当初の目的も第一段階に達した。この調子で行ってくれれば、本部の思惑になる。 「それで悠一くん、悠一くんはなんでここに居るの?」 「?あぁ、本部の人が水無月町に来てな。ちょっとだけ話し込んでいた。元より会おうという約束もしていたからな」 「おや、ってことは入れ違い?」 悠一が駅前に居たのであれば、それが妥当だろう。 おおよそ、本部の人とすれ違って纏は駅に着いて、悠一と会った。という可能性が高い。 必然でなければ、このような事にはそうならない気がするが、纏は故意とは考えなかった。 「そうかもな。会ったのは俺だったし、お前がわざわざ会う必要もないだろ」 「んー、そうだね。じゃあ悠一くん、ここらでお先に失礼するよ」 遅くなっちゃいけない。纏は足早にその場から離れようとした。 「いや、待て逢原」 そこで、悠一が駆け出す纏を呼び止めた。 纏はこちらを振り向いて足を止める。 「一人で帰らせるわけにはいかない。俺が送ろう」 彼女が隣町や市街に向かったのも、一応自分にも非があるようなものだ。 せめてもの善意はさせてほしい。 「えっ、いいの?やった。これで勝つる!」 悠一の提案に、纏は何やら嬉しそうに拳を掲げる。一体誰と勝負してその台詞を言っているのか、わからないが、とにかく賛成的であることがよくわかった。 「それで、家はどこなんだ?場合によっては近所かもしれない」 「……それって、隙あらばお邪魔しますという常套句かな?」 「そうじゃない」 ナンパだと思ってるのかこいつは。よくもまぁ、友達百人出来るかな精神で自分に接してきたものだ。 と面倒そうに悠一は思った。 そう思っていた。時、 「「!」」 突然、周りが時間を停止したようにぴたりと止まると同時に、不気味な気配が一帯に淀めいた。 一般人には感じ取れず、混沌を具現化したような、形容しがたい邪悪。 『盗魔(プランダー)』の気配だ。 「悠一くん……!」 「『盗魔』だ。ここから近いぞ」 気配の方向に目を向けて、悠一はポケットから、ネックレスチェーンが通された二つを交わらせたような形状の白い指輪を取り出す。 これが悠一の『魔装具(ミディウム)』だ。 『魔装具』である指輪を、そのまま左手で握りしめ、そして高らかに掲げる。
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