逢原纏は魔法少女である

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「『想力転依(エモーションチェンジ)』!」 まるで日曜朝の特撮ヒーローのように叫ぶと、 『魔装具』を握った左手拳から白い光が視界を覆う程にまばゆく光る。 そして悠一を覆っていた光が収まると、悠一は白衣を纏った少女に変化していた。 というのも、それは纏が以前遭遇した白衣の魔法少女で、彼女こそが、日笠悠一が魔法少女に変身した姿であった。 「……わたしが先に行く。あなたは後で追いついてきてね」 変身した悠一は、変身前と異なった口調で、異なった声色で纏にそう言った。 男がその喋り方なのは違和感があるものの、性別が女性になっている今の悠一には、全く不自然さは無い。 以前悠一が変身するところを見たが、やはりこの変わりようには毎度驚いてしまう。 「う、うん。魔法が強力でも、無茶はダメだからね。アポロン」 魔法少女になった悠一を、悠一ではなく真名(ソウルネーム)の『アポロン』で呼ぶ。 真名とは、魔法少女に変身している時の呼び名であり、魔法の特徴だったり、変身する本人の特徴等を表すものが多い。 しかし、誰が真名を名づけているのか不明で、初めて変身した際に、頭に浮かぶ名前が、真名として定着するケースがある。 それを便宜上、『天啓現象(オリジンシンドローム)』と呼んでいた。 悠一改め、アポロンは纏の心配に全く気にも留めない感じで返事をした。 「心配いらないわ。わたしの『光速信号(イエローシグナル)』に死角は無い」 彼女の『魔攻具(アウトプット)』である水晶玉を掲げると、アポロンの身体は光に変化し、流星のように空に向かって飛んで行った。 光そのものになるということで、姿はすぐに消えていく。 「……んー、便利な魔法ほど、心配なんだよね」 アポロン以外の本部所属の魔法少女が、一体どんな魔法を使うのか解らないが、『盗魔』に魔法を封じてくる個体が現れたらまず厄介だろう。というのが纏の見解である。 「まぁ、考えるより行動だね」 本当に現れたら、それから行動すればいい。 纏は複雑に考えることをやめて、『盗魔』の気配に向かって走った。 それでも時が止まったように動かない周りの世界は、止まったままだった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 気配はそう遠くなく、すぐにたどり着いた。 そこは、雑草が生い茂る公園。 遊具や鉄製の柵は錆びついていて、数年間公園として機能していないことが一目瞭然だった。
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