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「(……気配を感じたのはここらへんだけど、姿が見えない……)」
肌から感じる気配は、このあたりで間違いない。どう考えても、この公園に居ることは間違いない。
だが、視界には『盗魔』の姿は全く映らず、雑草が鬱蒼(うっそう)とした公園しか映らなかった。
「……炙り出すしかないね」
目で探しても埒が明かないと考えて、手にしている水晶玉を、公園の上まで浮遊させる。
そして水晶玉は、部屋の照明のように公園中を照らす光を放った。
すると、光が照らされた公園内のある風景が、不気味に蠢いた。
それはまるで、風景に溶け込んだような、文字通り透けるように溶け込んでたそれは、突然当てられた光で反応を起こして、化けの皮を剥がすように姿を現した。
その正体は、カメレオンだった。
体格は近くにある滑り台よりも大きく、体色は暗めの灰色、ぎょろりと動く目は黒く、まるで隅に潜むようにそこに居た。
しかし身体をすくめてはいるものの、アポロンに向かって襲い掛からないところを見ると、どうやら光が苦手のようで、動こうにも動けないらしい。
「……これが、今回の『盗魔』ね。本部所属時と比べれば小さい方かしら?何にせよ。『盗魔』は滅するのみよ」
水晶玉はカメレオンの『盗魔』に向けて光を放ちながら、再びアポロンの手に戻る。
そして手に戻った水晶玉から、矢を模した光線のような光を放ち、カメレオンを撃ち抜いた。
『ギィィィィィィィィ!!』
光線を受けて、悶え苦しむカメレオン。
しかし攻撃を受けて黙っているわけではないようで、口から素早く舌が放たれる。
「!」
舌攻撃にアポロンは横に跳んでかわす。
見事に舌はアスファルトの道路にに突き刺さり、アポロンに当たることはなかった。
「(ただ、風景に溶け込むってわけでも無さそうね……舌による攻撃をまともに受けたらダメージ半端なさそうだわ)」
舌は危険と判断して、カメレオンの口元に向けて複数のレーザー光線を放った。
光線を口に受けたカメレオンは苦しんでその場でのたうち回る。どうやら口元が弱点らしく、さっきよりもダメージが大きい。
「(手応えありね。一気に叩き込む!)」
今度は水晶玉を浮遊させて、光を集中させていく。その光量は先ほどよりも強く、そこから放たれる光線は高い威力を持っていると確信する程だ。
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