逢原纏は魔法少女である

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人工太陽のように輝きだした水晶玉は、溜めこまれた光を天空に向けて放った。 「穢れなき聖なる光で、一切の闇をも消し去れ。『光速信号(イエローシグナル)』!」 挙げていた右手を、アポロンはそのまま力強く下へと振り下ろす。 それに合わさって、天空に放たれた光は、まるで天罰を下すように、カメレオンに向け落下し、直撃した。 光がカメレオンに直撃した瞬間、衝撃で近くに生えていた雑草が吹き飛び、遊具がわずかに揺れる。 カメレオンはうめき声を上げる間もなく、まるで煙のように、微塵のように消え去っていった。 「……終わったわね」 『盗魔』の消滅を確認して、安堵するように呟く、 その呟いた声量から、どことなく疲労を帯びていた。 「(相手が一体とはいえ、『想力』をちょっとだけ使い過ぎたわ。これ以上『盗魔』は現れないだろうけど、立て続けに現れたら、今度こそ難しく)」 なる。とアポロンが考えていた時、 突然背中に衝撃が走る。それはまるで、体当たりを受けたような衝撃で、アポロンは前のめりに倒れた。 「うぐっ」 何が起きたのか、一瞬アポロンは判断が遅れた。 今すぐ立ち上がらないといけないと思った時には、うつ伏せに倒れる彼女の背中に何かがのしかかって、乗ってきた。 重さからして、人の体重と同じくらいか、あるいは少し軽いくらいに感じたが、丁度背中の上方あたりに乗ってるため、アポロンは立ち上がれなかった。 背中に何かが乗ってきて少々焦りを抱いたものの、改めて集中すると、背中に乗ってきたそれの正体が、気配で理解した。 「(ぷ、『盗魔(プランダー)』……!)」 馬鹿な、ならば後ろから体当たりしてきたのも『盗魔』ということになる。 しかし直前まで気配は感じなかった。一体どうやって自分の背後を取って攻撃してきたのか。 『グルルルル……』 『盗魔』出現ということに、頭の中が混乱している中、頭上から小さなうめき声が聞こえた。声からして、先ほどのカメレオンとは違う個体であると推理した。 そして、浮遊している四つの鏡の一つを使い、自分の背中を確認した。 それは狼だった。 犬のような体格に、薄い銀色に煤(すす)を被ったような体色の特徴を持ち、鋭い牙をその口から露出している。 その様子は、今にも噛みつきそうだった。
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