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「(くっ……!)」
すかさず、手元から離れている水晶玉から、背中の狼に向けて矢を模した光線を放つ。
だが狼はそれを見越したかのように、光速で飛来する光線を跳んで回避された。
「…………」
回避したことで、身体を起こすことが出来たものの、光線をかわされたことに少々懸念が残る。
あの狼は、アポロンの光線を捉えて回避出来るほど動体視力が鋭いようだ。
「(となると、わたしの『光速信号(イエローシグナル)』が通じるかも解らない。100%通じるという可能性がない)」
ならば、撹乱させるしかない。
アポロンは後方で浮遊している四つの鏡を周囲に散らせ、
その間に、手元から離れていた水晶玉を回収する。
狼は今にも飛びかかるような体勢でアポロンを睨んでいた。
「(行くわよ……!)」
臆した様子もなく、むしろ果敢にアポロンは水晶玉から光線を放った。
しかし光線は一つではなく、四つ。
三つは狼とは違う方向に向けられ、その内一つは真正面から狼に向かっていた。
しかし真正面から来たことで、狼は光線を難なく回避した。
だがそれをアポロンは見越していた。
「(かかった)」
狼が横に回避した時、その他の三つの光線が狼の身体を撃ち抜く、無論避ける暇もなく、撃ち抜かれた。
『ギャゥ』
小さな悲鳴とともに、狼は着地する。
光線によって、撃ち抜かれた箇所から血のような青い液体が漏れだす。どうやらダメージを受けることは出来たようで、わずかによろけている。
「(四つに分散したから、一発で仕留めることは出来なかったけど、これぐらいなら倒せるわ)」
『魔攻具』の一つである鏡は、光を放つことは出来ないものの、水晶玉から放った光を反射させる特性を持つ。
三つの光線が狼を撃ち抜けたのも、この鏡のおかげだ。
鏡の移動や光の反射による『想力』の消費は全くないし、素早く光の先まで動かせることが可能。
補助専用の『魔攻具』とはいえ、使い勝手は非常に良い。
『グルルル……』
光線をその身に受けながらも、狼の『盗魔』は牙をむき出しにして、アポロンを睨みつける。
どうやらこいつは、命を捨てる躊躇いが無いようだ。
「(跡形もなく消すのが、最良ね)」
しかし先ほどの巨大な光線では、『想力』が底をつきそうだ。
ならば命中率を上げるために、光線の数を増やすほかない。
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