逢原纏は魔法少女である

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四つの鏡はそのままの配置にして、水晶玉に光を集中させた。 だがそれを狙ったかのように、狼がアポロンに跳びかかった。 手負いを感じさせない、勇ましい跳躍に、アポロンはわずかに驚いたが、しかし跳びかかるスピードはなんら大したことはない。アポロンは跳びかかってくる狼に向けて、足蹴りを浴びせた。 蹴り飛ばされた狼は地面に転がるが、すぐに立ち上がって襲いかかろうとする。 これでは埒が明かないな、とアポロンは考えて、水晶玉から光線を放つ。 光線の数は五つ、そのうち一つは狼に向かっている。 『ガァァァァァァ!!』 だが、狼は光線を真正面から、というより、最低限かわす姿勢を見せつつも、光線を真正面から受けた。 丁度胴体の右側をかすめる程度に抑え、狼は駆ける足を止めない。 あと二秒ほどで、アポロンの喉元に向かって噛みつこうとしていた。 「……向かってこようが、関係ない」 対しアポロンは、つまらなそうにそう言った。 他の四つの光線は、まるで予定調和のように、 四つの鏡に反射して、狼の首元を集中的に射抜いた。 『ギャ、ギ』 悲鳴にもならない、声になるのかも怪しい声を漏らし、狼は喉元を消失して倒れた。倒れた狼の死骸は、塵になって消えて行った。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「アポロン」 狼の『盗魔』が消え去ったところで、纏が辿り着いた。 駅から全力疾走で走ってきたようで、ぜえぜえと肩を揺らして息をしている。 「……丁度良かった。もう『盗魔』は倒したわよ」 余裕そうに言って、公園の方を指差す。纏は雑草がある程度消失した地点を見て、おー、と声を上げた。 「あれ、魔法でやったんだ。でも、ちょっとやり過ぎじゃない?」 「こうでもしないと、塵に出来なかったのよ」 そうは言ったものの、確かに『想力』を大きく消費してしまった事は失敗だった。 「……一体、いや二体は居たね?ふふ、本部の魔法少女は複数相手でも関係ない。ってこと?」 「二体目は予想外だった。不意を突かれたわ」 「あ、そうなんだね。てっきり二体とも同時に相手してたと思ったよ」 むしろ二体同時に現れてたらどれほど楽だったか、と思ったが、後から現れた狼の『盗魔』の方は中々手こずらせた。 常人の感覚ではまず避けられないような速さの光線を、間一髪回避しているのだ。 鏡の反射による攻撃が無ければ勝てなかったかもしれない。
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