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『逢原纏(あいはらまとい)』は魔法少女である。
というのも、まだ一年目であり、何故自分は魔法少女なのかと時折疑問を抱かせることはあるものの、町に出没しては一般人を襲う魔物、『盗魔(プランダー)』を倒していっているので、
最近は魔法少女である事に全く嫌とは思っていなくなっていた。
なんてたって、正義の味方を演じているようで心がとても弾んでいたからである。
そんな彼女であるが、彼女の周りに、というより、友達に魔法少女をしている人間が居ない事に少々息詰まりを感じていた。
勿論、魔法少女機関『ティンクルスターズ』には同年代の人はいるものの、所詮は魔法少女間で付き合うくらいで、日常生活で付き合いのある人は居ない。
仲間が居ることは良いことだが、秘密を共有出来る友達が居ないのが、彼女の悩みでもあった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そんな十月の中旬頃、彼女の通う水無月(みなづき)高校に転校生が現れた。
黒板には『日笠悠一(ひがさゆういち)』と漢字四文字がチョークで堂々と書かれ、教壇にはクラスの担任と、
メガネをかけた男子生徒が立っていた。
「今日から、この学校に転校してきた日笠悠一だ」
「……よろしくお願いします」
黒髪にメガネ姿の生徒、悠一は静かに挨拶をし、軽くお辞儀をする。
その印象はまるで物静かな少年を思わせる。
「日笠は、親の事情でこの街に引っ越してきてな。仕事の関係でまたここを離れるかもしれない。みんな仲良くしろよ」
はーい、と生徒たちは小学生のように返事をする。少々変な光景だ。
「お前の席は……あの突っ伏してるあいつの隣だ」
突っ伏しているあいつとは、紛れもなく纏のことだ。
纏は先日の『盗魔』退治によって疲労困憊を強いられ、今こうして居眠りをしているのである。
なんて説明したところで、皆は知る由も無い。秘密にしているからだ。
「……起こしましょうか?」
その様子を見て、悠一が彼女を起こそうとした途端、
「ふぇっ?」
突っ伏していたそのクラスメイトは、急に頭を起き上がらせた。
口によだれを垂らしつつ、寝ぼけ眼を向けながら。
「……先生ぇ。その人は教育実習生ですか?」
起きて開口一番、寝ぼけて発したような言葉に、クラスメイト全員は『そんなわけあるか』と内心突っ込んだ。
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