逢原纏は魔法少女である

5/32
前へ
/33ページ
次へ
それからのこと、纏は悠一を見かける度に話しかけた。 積極的に、むしろしつこいくらいに接した。 登校中や、 授業中や、 昼食中や、 掃除中や、 下校中や、 学校生活余すこと無く、纏は悠一に絡んできた。 対し悠一は、冷たい態度で拒絶し、反発し、度外視する。 それに比例して、纏はアプローチとアタックを繰り返す。 その様子は周りから見れば奇妙で奇抜な関係でしかなかった。 さもありなん、執心気味に接近する女子学生を、 毎日のように軽くあしらう男子学生。 奇妙で奇抜で、奇天烈な風景だ。 日笠悠一が転校してきて三日後、クラスメートは纏と悠一の関係に何らかの繋がりがあるのでは無いのか?という噂が立った。 そしてその噂は、流行語の如く、感染症の如く、学校中に響き渡る。 だが響き渡ることで、ある事やない事が正しくも誤るもない言葉となって、学校の隅々まで行き渡ってしまった。 悠一としては、実に迷惑な話である。 「……纏。あんた一体何がしたいの」 悠一が転校してきて四日目、いつもの友達で昼食を摂っていた時、 七がとても呆れたように纏に尋ねた。 「クラスじゃあ、纏と転校生は付き合ってるって感じになってるよ。一方的に絡むからこうなるんだよ……」 続いて、美波がため息をついて、流れた噂を口にする。無論なんの根拠も無い噂だ。 「纏。悪いことは言わないけど、あまりしつこくやったら嫌われるわよ。一部じゃあ『殴ってくださいと転校生に懇願してる』って噂も流れてるし」 それはいくらなんでも屈折し過ぎだ。とはいえ噂に敏感な人間は大体鵜呑みにしてしまうだろう。 本当に皮肉なものだ。 「あー……何がいけないのかな」 噂の渦中の一人、纏は何か模索するように呟く。まだ諦めていないと、言わんばかりの言い方だった。 「フレンドリーなのが嫌なのか。あるいは攻め過ぎなのか……ねぇ二人とも、どう思う?」 「どう思うも何も、諦めなよ纏。どう見ても悪印象にしかならないよ」 「そうはいかないよ美波。彼をほっとくなんて、わたしにはとても出来ない。あんなに冷たくあたるのは何か理由があるかも」 あったとしても、それは纏が突っかかってくる事だと思うけど、と七と美波は思う。 彼女たちも纏の行動には呆れていた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加