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それからのこと、纏は悠一を見かける度に話しかけた。
積極的に、むしろしつこいくらいに接した。
登校中や、
授業中や、
昼食中や、
掃除中や、
下校中や、
学校生活余すこと無く、纏は悠一に絡んできた。
対し悠一は、冷たい態度で拒絶し、反発し、度外視する。
それに比例して、纏はアプローチとアタックを繰り返す。
その様子は周りから見れば奇妙で奇抜な関係でしかなかった。
さもありなん、執心気味に接近する女子学生を、
毎日のように軽くあしらう男子学生。
奇妙で奇抜で、奇天烈な風景だ。
日笠悠一が転校してきて三日後、クラスメートは纏と悠一の関係に何らかの繋がりがあるのでは無いのか?という噂が立った。
そしてその噂は、流行語の如く、感染症の如く、学校中に響き渡る。
だが響き渡ることで、ある事やない事が正しくも誤るもない言葉となって、学校の隅々まで行き渡ってしまった。
悠一としては、実に迷惑な話である。
「……纏。あんた一体何がしたいの」
悠一が転校してきて四日目、いつもの友達で昼食を摂っていた時、
七がとても呆れたように纏に尋ねた。
「クラスじゃあ、纏と転校生は付き合ってるって感じになってるよ。一方的に絡むからこうなるんだよ……」
続いて、美波がため息をついて、流れた噂を口にする。無論なんの根拠も無い噂だ。
「纏。悪いことは言わないけど、あまりしつこくやったら嫌われるわよ。一部じゃあ『殴ってくださいと転校生に懇願してる』って噂も流れてるし」
それはいくらなんでも屈折し過ぎだ。とはいえ噂に敏感な人間は大体鵜呑みにしてしまうだろう。
本当に皮肉なものだ。
「あー……何がいけないのかな」
噂の渦中の一人、纏は何か模索するように呟く。まだ諦めていないと、言わんばかりの言い方だった。
「フレンドリーなのが嫌なのか。あるいは攻め過ぎなのか……ねぇ二人とも、どう思う?」
「どう思うも何も、諦めなよ纏。どう見ても悪印象にしかならないよ」
「そうはいかないよ美波。彼をほっとくなんて、わたしにはとても出来ない。あんなに冷たくあたるのは何か理由があるかも」
あったとしても、それは纏が突っかかってくる事だと思うけど、と七と美波は思う。
彼女たちも纏の行動には呆れていた。
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