逢原纏は魔法少女である

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「とにかく、しばらくは彼に話しかけるのやめたら?その後でも話しかければいいじゃない」 「だめ」 七の提言を拒絶するように、首を左右に振る纏。 「ここでやめたら、一生彼に話ができない気がする。間を取る間に、深い溝でも出来てたら最悪だよ」 頑なだった。 むしろあしらわれて諦めない彼女もなかなか図太い根性を持っている。 何が彼女をここまで押しているのか、気になるくらいだ。 「……纏は凄いよね。どうしてそこまで、あいつと友達になろうとか思うの?わたしだったら無理だよ」 そこは少々気になる話だ。 二人は、積極的に彼を引き入れようとする彼女の姿勢が、気になっていた。 いつもなら、他愛もないような会話をして、 午前の授業は居眠りをするような体たらく、おおよそ有言実行よりも果報は寝て待てな彼女が、あそこまで行動的になるのは、 本当に目を見張るものだ。 「……彼、人目を特に気にしてるところがあってね、この前屋上で食べてた時、悠一くんはわたし達を避けるように隅に行ったんだ。人見知り、にしても少し違和感があるし、まるで認識されることを嫌がるように見えたんだ」 「嫌がる……?」 美波は少し疑問を抱くように呟く、纏の言っていることは推測でしかなく、にわかに信じられそうにないが、七は何か理解した。 「……確かにあんたが話しかける時は、迷惑で避けているって感じより、関ったらいけないから避けてるって感じがする。まぁ、見た感じだけどね」 得心気味に、だが自信無さそうに言う。七も纏が抱いていた意識を、理解していたようだ。 「そうなの纏?」 確認するように尋ねる美波。 「んー、大体は七の言う通りかな。ちなみに少しだけ悠一くんに何もせず様子も見てみたけど、周りには最低限のあいさつと言葉を交わすくらいで、比較的親交な関係を持つ生徒はいなかったよ。やっぱり皆から距離を置いてるとこがある」 「…………」 「…………」 流石の美波も(理解を示していた七でさえ)どん引きだった。どんな考察力を以てしてそう思いつくのか、美波には早々理解出来ない。 「だから、彼が何故皆から距離を置くのか気になっててね、それを解ったうえで、改めてわたしの友達にしたいってのが、わたしの気持ちだよ」 「……中々踏み込んだ物言いだね」 「でも、そう図々しかったから、わたしたちこうして纏と過ごしてるわけだけど」
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