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虹村七、仙崎美波も、最初こそ纏の熱烈なアプローチには鬱陶しく思っていた。
だがそれでも、比較的やんちゃだった二人としては、距離を置かれ、壁を作られていたクラスにも馴染めることが出来た事には感謝していた。
ひと目見れば救いようのない素行の悪さと、誰彼構わず敵対する気性の悪さ、それらすべてお構いなしに纏は接してきた。
普通なら寄り付かないし、近づけば怪我を負わされると噂されていたのに、しつこいくらいに接して、戸惑わせた。
そうされている内に、二人はいつの間にか纏の友達になっていた。
そんな不思議な武勇伝があるほど、纏はお節介で人懐っこかった。
「……ん?」
ふと、纏は学校の外に目を向ける。
ただ目を向けているわけではない。
『盗魔』の気配を感じて、目を向けているのだ。
「?どしたの纏?」
「ごめん二人とも、わたし先に教室に戻ってるね!あ、悪いけどわたしの弁当箱、バックに入れておいて!」
それだけ頼み込むと、纏は二人の返答を聞かずに、慌てて駆け出した。
そのスピードに、七と美波は一言も発する事も出来ず、あっという間に纏の姿は消えていった。
「……嵐みたいに去ったわね」
「いつも思うけど、たまに脱兎の如くどっかに行くよね。どうしたんだろ」
纏が時折大急ぎでどこかに行くことは、既に二人は理解していたようだ。
「まぁ、考えたって仕方ないわ。わたし達も弁当食べて、教室戻らないとね」
走って行った纏のことを全く気にせず、二人は昼食を再開した。
親友が魔法少女として戦っているとは、毛ほどにも抱かずに。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
纏は、『盗魔』を追って学校外に出た。
わざわざ学校から出るなら、水無月町支部に所属する別の魔法少女に行かせれば良かったのだろうが、、纏が感じ取った『盗魔』は水無月高校の近くに出没したと察知したので、率先して向かっていた。
「(……んー、もうすぐかな)」
『盗魔』は秒読みなほどに近づいてきたと感じると、纏は首にかけているそれを取り出す。
それは、じゃらじゃらとチェーンで繋がれ、髑髏模様が入った長方形の黒いペンダント。一見して、ヘビメタバンドのボーカルがかけてそうなごっつい印象を持ち、おおよそヘビメタとは無関係そうな女子高生である彼女が持つには不釣り合いだったが、
そのペンダントこそ、纏の『魔装具(ミディウム)』だった。
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