逢原纏は魔法少女である

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『魔装具(ミディウム)』、その人が特に思い入れが強い物を媒介とし、魔法少女に変身する為に必要なアイテム。纏は最初に出会った魔法少女によって『魔装具(ミディウム)』を与えられ、魔法少女になったのだ。 纏は『魔装具(ミディウム)』の精製のために思い入れの強い物として、その時持ち合わせていたペンダントを差し出した。結果としてこのようなデザインになって帰ってきてしまったのは、無論予想もしていなかった。 そのごっついデザインには纏も最初は嫌だったが、魔法のタイプを考えれば確かにデザイン通りだったと納得して、この『魔装具(ミディウム)』を(出来るだけ)肌身離さず持ち歩いている。 だからと言って、見せびらかすように持っていては持ち物検査に引っかかるので、服の下に隠すようにかける事にしていた(動くたびに、ペンダントの四角いところが肌に当たって痛いのは我慢している)。 『盗魔』の姿が秒単位で解りそうなところで、さあ変身だ。と思った矢先、 突然、目の前にまばゆい光が発せられ、纏は思わず急停止した。 「っ……!」 目も開けられないようなまばゆい光は十秒ほど続き、光が収まった頃には、 『盗魔』の気配が途絶えた。 煙に巻かれたように、無くなった。 何故途絶えたのか、纏は少し焦った。 誰かが先んじて出撃したのか? しかし纏が知る限り、水無月支部に所属する魔法少女には、光を用いた魔法を持つ者は一人もいない。 イレギュラー、それが有力だと纏はすぐに考え、 『盗魔』が居たその場所に、纏はやっとたどり着いた。 『売地』と書かれた看板が、まるで門番のように立つ空地、その敷地に纏が追っていた『盗魔』は居ない。その代わり、 少女が一人で立っていた。 年齢は十二ほどで、背中までつきそうなほど長く純白色の髪を、太陽を象ったような橙色の髪留めでうなじあたりを一括りに結んでいる。服装はこれまた白いドレスで、腰に純白のリボンが結ばれ、両手は白のオペラグローブを身につけ、レース柄の入ったニーソックスを纏った両足に、メーカーのロゴのような羽の模様が特徴的な白いショートブーツを履いていた。 そして手には、遠くまで見通せそうな程透明な水晶を持ち、周囲には四つの鏡が浮遊している。 目撃した纏は、その姿に思わず目を見開いた。
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