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その瞬間、老人の表情が一気に強張った。
「なるほど、そういことかい。珍しいこともあるもんだい。あんたそれが何かわかっとらんじゃろ。まあ欲しけりゃくれてやる。」
なんとタダでくれると言うではないか。
「その代わり、わしゃ責任は一切とらんからな。さあ悪いが今日はもう店じまいじゃて。」
そういうと老人はそそくさと店の奧に消えていった。
そして、追い出されるように店を出ると日もどっぷりと暮れ、月が怪しく光っていた。まるであざ笑うかのように。そして手にした黒い革の本には不可思議で幾何学的な模様が浮かび上がっていたのだ。
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