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その夜はいつもよりかなり早く就寝した。 しばらくぶりに外出して体力も使い、新しい環境に身を置いて緊張もあったのだろう。 それにしても、古書店の老店主の態度には引っかかるところが多かったが、気難しい人なのだろうとキッパリと忘れることにした。 ?月明かりが差し込む部屋には、申し訳程度に家具があるくらいで、机の上にはさっきの黒い革の本が置いてあるだけだ。 ?あんな立派な本がタダで手に入るとはしめたものだ。 ?明日、オカルト研究会へ持っていって自慢してやろうとワクワクしていた。 ?思えば幼少の頃から、周りの子供とは興味関心の感覚がズレていた。流行りのものには関心がないわけではないが、TVで怪奇現象特集や古代神話、某妖怪アニメに夢中になっており、その話しを友達に聞かせるものなので、度々幼稚園から他の子供が怖がるからという理由で親に苦情がいっていたらしい。 ?そういう経緯もあり、学校ではいつも浮いた存在であった。 しかし、どんなに周りから浮こうとも、そういった未知のものへの好奇心は強まる一方だった。 かといって、自分に霊感や超能力などは一切なく、ごく普通の人間であることは揺らぎのない事実であった。 ?確かに夢の中でくらいは不可思議な体験をしないことはないが、それは皆同じだろうと思っていた。しかし、予知夢や暗示的な夢を見ることが他に比べて多いのも自覚していた。特に、人の死については。 ?こういった少年時代の影響もあり、大学では民俗学を専攻することにしたのだ。親にはそんな勉強して仕事があるのか心配はされたが、なんとか説得に成功して今こうしているわけだが。 あれこれ考えているうちに、まどろみの中に落ちていった。 ?眠りに落ちる瞬間、窓に、窓に黒いモヤのような影がのっそりとたたずんでいるのを目の端で捉えた。
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