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夢と現実の境は果たしてどこにあるのだろうか。
現実として生活があるとして、夢はそのままただの夢として認識していいものなのか、幼少の頃から疑問に思い続けてきた。
まあ、おそらくその答えは一生に渡る研究においても微塵も出ないだろうというのは想像に容易い。
しかし、その答えを求めて止まないのが我々人間という種族なのだろ。
歓喜や恐怖、愛情、憎しみ、憧れ、嫉妬といった人間の本来持つ理性を超えた本質が混沌として、そして、きらびやかに自己、または世界を映し出す幻惑は魅了されて当然だろう。
そんな幻惑の世界では、自己の願望よりもより深いものに出くわすことが多々ある。
しかし、今宵の夢はいつにも増して不気味の一言に尽きた。
薄暗闇に蝋燭の火がともされ、世界中の様々な伝統行事に使用されるであろう仮面を付けた素っ裸の人々がゆらゆら身体を動かしていた。
男も女も関係なく、ある者は筋骨隆々で、またある者は醜く堕落した肥満体であった。
一様にゆらゆらと身体を揺らす人々の奧には、何やら巨大な石像のような物体が鎮座していた。
その姿は常に揺らめいていて、まるで蜃気楼のようで、表情はここからでは伺うことは叶わない。
その時、どこからともなく霧が立ち込めてきて、全裸の仮面を付けた人々が一斉に動きを止め、石像に向かい跪いた。
ただ自分は傍観者として立ち尽くすしかなかった。
跪いた人々はしばらくして、波を打ち始めた。
まさしく、神を崇める様そのものではないか。
霧は一層濃く立ち込め、もはや自分の足元さえ見えない。
やがて、その人の波に異変が生じはじめた。
明らかに最初よりも人が減っているのだ。
身を乗り出そうとして気づいたのは、両手両足を縛られて椅子に固定されていたことだ。
いくら夢にしてもこの状況には愕然として、戦慄が身体を走った。
そうこうしているうちに、辺りにはひと気が感じらなくなった。
そして、霧の中から、美しい金髪の女性が現れ、徐々にこちらに近づいてきた。
その扇情的で官能的な姿に見とれているうちに、仮面が自分の顔の真ん前にあった。
そしてその女性はゆっくり仮面に手をかけ、一気に剥がした。
その瞬間、激痛とともに目覚めた。すぐに顔に手をやり確認したが、異常は何も認められなかった。
確かに、夢の中とはいえ、あの痛みは顔を食いちぎられた痛みだったのだ。
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