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「わあ…」
目の前に広がった光景に、思わず、感嘆の声を漏らす。
そこには、薄ピンク色に染まった桜並木が悠然と佇み、そのずっと先の方に桜華学園の校舎が構えていた。
優しく道を包みこむように、満開の桜が通る者を出迎える。
「綺麗…」
その圧倒的な美しさに、思わず走っていた足を止めて見とれてしまう。
「前に来た時は、これが桜の木だったなんて気付かなかったな…」
この場所を通るのは二度目。一度目は入学試験で訪れた日。その時は、無機質な木々が並んでいただけだった。
それなのに、今は、その時と同じ場所にいるとは思えないほど、まったく違う景色が広がっている。
不思議とその空間だけ、流れる時間の早さが違っているように感じた。
穏やかな風に揺られる小枝はまるで、おいでおいでと手招きしているかのようだ。
優しい桜の香りを胸いっぱいに吸い込むと、不思議と気持ちが落ち着いて、代わりに身体の奥から元気が沸いてくる。
(今日からここが私の通う学校。頑張らなくちゃ!)
ひらひらと舞う薄ピンク色の花びらが、新しい出会いを予感させた。
真子は「よし」と気合を入れて、再び走り出した。
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