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「ごきげんよう、神城くん」
龍聖は、背後からかけられた聞き覚えのあるその声にチッと舌打ちしたくなるのを抑えながら、ニコリと作り笑顔をして振り返った。
「オハヨ。小野寺」
小野寺薫子(おのでらかおるこ)は、龍聖の顔を確認すると満足げな笑みを浮かべ、よく手入れされた美しい巻き髪をふわりとなびかせながら、さりげなく隣につく。
高級ブランドのスクールバッグを持つその指先には豪華なネイルが施され、キラキラと輝いていた。
「神城くんとまた同じクラスになったと聞いて、私本当に嬉しかったの」
幼稚部の頃からずっと一途に龍聖を慕ってきた薫子。彼女が龍聖に好意を寄せているのは周知の事実で、皆一様に「美男美女でお似合い」なんて勝手なことを言うが、龍聖には迷惑なだけだった。
それどころか、付き合っているわけでもないのに彼女気取りをしてつきまとう薫子の存在が正直鬱陶しかった。
学園一の美少女と名高い薫子の美しい横顔も、くらくらする甘い香りも、龍聖にとっては魅力的でもなんでもない。
とは言え、在学中にくだらないことでゴタゴタするのも面倒なので、龍聖はテキトーに薫子の相手をしていた。
それが薫子のずうずうしさに拍車をかけることになるのだが…。ある意味自業自得なので、もう諦めている。
薫子は、他の女子が龍聖に近付かないよう常に目を光らせているが、特に実害はない。どうせ、この学園の女には興味がないのだから。
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