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「その字、殿田のですね。
8が特徴的だからすぐ分かります」
田所さんはクスクス笑う。
「逆さまに書き込んであるのも興味深い」
そう言いながら、田所さんは自分の座っていた席に戻った。
「メモを見る限りにおいて、
私と水野さんでは売り場分析のアプローチが全く異なるので、
印象だとかそう言うものを話してもらっていいですか?」
殿田さんは資料の中から、店内図を取り出して私の前に広げた。
「ソフトラインだけでも良いですよ」
と、2階の図を指差す。
わたしは図を見ながら、殿田さんと店内を歩いた時の映像を脳内で再生していく。
「ベビーの売り場のマネキンがとても可愛くて、
おくるみなんかも実用的な雰囲気ではなくて
可愛らしさを前面に出してありました」
殿田さんの前で思わずはしゃいでしまったことを思い出して、
顔が熱くなった。
田所さんはメモを取りながら、真面目な顔でわたしの話を聞いていた。
一通り話し終える。
「だいたいわかりました。後は、質問していきますので」
田所さんは資料をめくって何かを考えているようだ。
「ところで、その怪我はいつされたんです?」
資料から目を離さずに聞いてきた。
「モールの帰りに転んでしまって」
ちらっとわたしを見て、すぐに資料に目を落とす。
「じゃあ、殿田と一緒だったんだ」
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