第1章

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そして、放課後がやってきた。 指定された教室に、三人がまず集まる。 「……私達の他に呼ばれてる奴っているのかしら」 「さぁな。……まぁ、顔が前のまんまなんだから見りゃあ分かんだろ」 沙那は携帯を弄りながらのんびりとくつろいで、神楽は緊張で顔が強張っている。 「沙那……お前、緊張とかしないのか?」 沙那はす、とこちらに目を向けたあと、ああ、と声を漏らした。 「私、精神年齢は70超えてるのよ。前は大往生だったから」 「……は?」 神楽はぽかんと口を開けている。 「そんだけ生きてりゃ、緊張はしないな……」 「そ」 沙那は目を携帯に戻した。 俺は口を開いた。 薊姫は。 そう聞きたかった。 だが、前に既に教えない宣言をされているので、俺は開いた口を静かに閉じた。 …ドアが開いた。 「……!」 入ってきたのは…… 「……は?お前……忍?」 長身で長い髪を後ろで束ねた男子生徒。 それは、前で言う『忍』だった。 「お前も記憶があるのか?」 神楽は興奮気味に忍(仮)に近付いていく。 「……華紅羅、か?」 忍は端正な顔立ちを驚きに染めている。 「あぁ、華紅羅だ。……今は神楽だけどな。お前は?」 「俺はそのまま忍だ。」 忍(確定)はふ、と笑った。 「し、……忍が笑った!?」 前世で忍は忍者をやっていて、主に暗殺や偵察に徹していた。 幼い頃に薊姫に拾われた忍は、薊姫の為だけに生きていて、俺が……白が生きていた中で忍が笑っているのを みたのは一度だけだった。 それは神楽も同じだったらしく、ぽかんと口を半開きにして呆けている。 沙那に至っては、若干引いている。 「……アンタ本当に忍?笑ったの初めて見たんだけど」 「俺は忍だ。そう言うお前は……沙那、か?随分と印象が違うんだが……」 「沙那よ、間違いなく。読み方は違うんだけど……面倒くさいわね、もう。」 沙那はゆるゆると首を横に振って、携帯に視線を戻した。 「忍、ここに俺達を呼んだのって……」 俺の疑問に答えたのは口を開いた忍てはなく、一人の声だった。 「おれだよ」 「……!」 「……姫、様……?」 「やっぱり……」 「…………」 目を向けた先には、自分を『おれ』と呼ぶかつての主君がいた。 「久しぶりだな……集まってくれてありがとう。……話がある」 教室の中に、緊張が走った。
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