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「ねぇ……どう言うこと?いきなりバンドって言われても……」
いち早く放心状態から開放された沙那は、薊姫に目を向けて眉を寄せる。
「どうもこうも、そのままの意味だ。おれ達でバンドがしたい」
「まだそんな事を言っていたのか……」
頭を抱えていた忍が薊姫を見上げるようにして呆れた視線を送る。
「どうしてそんなに俺達でバンドがしたいんだよ……姉さん」
「「「……ん?」」」
「お前には散々説明しただろう。小さい頃から物分かりの悪いやつだな」
「そうじゃなくて……っ」
「いやこっちのセリフだっつーの!は!?何!?姉さん!?」
今度は神楽が復活し、忍に詰め寄る。
「今姉さんっつったか!?子分とかじゃないよな!?お前ら……姉弟に生まれたのか!?」
「……そうだ」
忍は静かにそれだけ返事をすると、薊姫から視線を外した。
その方向はまさに明後日である。
「……なんか忍が突然黄昏だしたんだけど。」
「黄昏てるって言うより……現実から目を背けてるって感じね」
「頼むからそう言うのは本人の居ない所で言おうな、お前ら…」
忍が復活しそうにないが、薊姫は更に言葉を続ける。
「あぁ、あと1つ重要な事を言っておく。
おれの事を薊姫と呼ぶな。薊姫だとも思うな。おれは薊姫じゃない、白城 薊だ
」
「……?」
「それは、どう言う……」
神楽と沙那は疑問を口にするが、俺は薄く理解を始め、驚愕に目を見開いた。
「……俺に、薊姫を忘れろと言っているのか……?」
薊姫は目を細めて、静かに肯定を表した。
「……ちょっと、どう言うこと?説明しなさいよ」
短気な沙那は痺れを切らして俺に声を荒らげるが、俺の耳にはあまり入ってきていなかった。
薊姫が言っていることはつまり、こう言う事だからだ。
『自分は薊姫ではないから、白の記憶を持った琥珀だからといって前世の約束を守るつもりはない。
自分は琥珀の事を何とも思っていない』
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