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「おれからは以上だ。各々でどうか前向きに考えてみてほしい」
俺達の間に重い空気が流れる。
薊はそれ以上何も言わず、そのまま教室を去っていった。
ぱたん、とドアの閉まる音が響く。
「……」
「……」
「……忍」
「……何だ」
「薊は何を考えてるんだ?」
「……俺にも詳しくは話してくれなかったんだ。すまない……」
そうか、と俺は小さく言うと、この空気から逃れるように教室を後にした。
……なんなんだ。
なんなんだ、一体。
俺達は確かに前世で運命をともにした仲であった。
だが、一度死を迎え、転生して再会した薊から発せられたのは前世への労いの言葉などではなく。
琥珀はほんの少しの憤りを感じていた。
前世を否定するような態度。
それは、あの時の薊姫への想いまで否定されたようだったからである。
前世の薊への忠誠心がその憤りに蓋をする。
もやもやとした感情を押し込んだまま、俺は重い足を引きずるように歩いた。
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