第1章

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封筒にはやたら分厚い何かが入っていて、とんでも無い重量感がある。 表には『西園寺 琥珀様』とあり、間違いなく俺宛だと言っている。 「何だ……?」 中を覗くと、ソレは本らしい。 だが、知り合いの誰にも本を寄越すように頼んだ覚えはない。 そもそも俺は本を読まない。 少し考えてみると、俺の友人の中で読書好きがいることに気付く。 「神楽……」 あの野郎が読めと言っているのだろうか。俺はとりあえずその本を持ち帰ることにした。 とは言え。 元々本を読む習慣のない俺はその本の存在をすっかり忘れて迎える11時半頃。 『ピピピ、ピピピ、ピ…[よぉ琥珀か?、あのさ…「琥珀か?じゃねえよ。何で俺が風呂に入ってる間にお前からの着信が32件もあんだよ。10分の間に何があったんだよ。ってか10回目辺りで出ねぇって気付けよ。お前の着信で揺れまくった携帯机から落ちてハードケースにヒビ入ってたぞどうしてくれる」…]』 電話の主は神楽だった。 [……つまりひっくるめるとお前の携帯ケースは安物だったって事でいいか?] 「否定はしないがとりあえず謝れ。32回謝れ。10分かけて謝れ」 [お前は一体何にキレてんだよ。……てゆーかそうじゃなくて、] 俺の怒りを完全にスルーした神楽はいつもよりも低い声で淡々と話す。 [俺達、親友だよな?] 「……は?」 俺は自分で思っていたよりも間抜けな声を出してしまう。 「何だ?ついに振られたか?」 [ちげーよ、縁起でもねえ!!] 神楽は焦ったように叫ぶが、いつもより覇気がない。 [……俺達、これからも親友だよな?] 「……何言ってんだお前?」 神楽が冗談を言っている様には聞こえない。 だからこそ 「気持ちわりい」 [口から出てんぞ本音が。……あのさ] 神楽は深呼吸して、言う。 [俺の下駄箱に本入れたの、お前?] ……はぁ? 「なんで俺がお前に告白みたいなシチュエーションで本を送るんだよ」 俺は呆れたように言うが、神楽はしばらく黙った後。 [【白月城 薊姫】] 「……っ!?」 喉がヒュ、と鳴る音がやけに大きく聞こえた。 ……何で今、あの本の事……
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