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そのタイトルは確かに今日俺の下駄箱に入っていた本で、俺はそれを神楽の仕業だと思っていた。
それだけに、神楽の口から本の名前が出ると……気味が悪い。
「……俺の下駄箱にその本が入っていたが、お前か?」
神楽は呆れたように答える。
[さっき俺になんて言ったっけ?]
俺は眉を寄せて、溜息をつく。
コイツじゃなければ、一体誰なんだ、ーーー?
[……本の持ち主、知りたいか?]
神楽は唐突に言う。
「知ってんのか?じゃあお前が……」
教えろ、そう言おうとしたが、神楽の冷たい声に遮られた。
[読めば分かる。思い出すよ……多分、な]
「……思い出す?」
神楽は俺の疑問に答えることなく電話を切った。
「……なんなんだ?一体……」
俺の頭の中では切られた電話越しに険しい表情をする神楽の顔が一瞬よぎった。
結局その日はあの本に手を出すことは無かった。
次の日。
いつも通り遅刻ギリギリで教室に入ると、同級生がニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「……なんだよ」
「お前を探してる可愛い子がさっきまでお前を待ってたぞ??いつの間に彼女作ってたんだ?」
「……は?」
まず言おう、俺に彼女はいない。
「どんな奴?」
「髪の毛ふわっふわの猫目美人」
同級生は楽しそうに話すが、そんな人物に覚えはない。
「名前は?言ってなかったか?」
「え?彼女じゃないのか?……名前は聞いてないけど」
「……ん、また来たら言ってくれ」
俺は特に気にすることも無く、午前の授業を終えた。
その人物は、昼休みに再び俺を訪ねてきた。
「ねぇ、アンタ西園寺琥珀?」
その少女は同級生が言った通りの猫目美人であった。
……少々化粧が濃い気もするが。
ネクタイピンは学年が1つ下である事を示している。
「そうだけど……なんか用?」
上級生として若干口の聞き方が気にならないでもないが、俺はソレを指摘しないで質問を返す。
「用って言うか……アンタ……」
少女は目を細めて、俺をじっと見る。
「……なんだよ?」
沈黙に耐え切れず俺は再び聞くと、少女は肩に掛けていた鞄をゴソゴソと漁り始める。
そして出てきたのは。
「コレ。知ってる?」
あの本だった。
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