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おい、なんだ。
その終わったら呼べみたいな。
おい、こっちを見ろや。
俺は顰めっ面で安藤を睨んでいると、すんごい勢いで胸倉を掴まれた。
「おぃ、今話しをしているのは私だ。なに余所見をしているんだ?」
「いや、俺は幸子さん以外は見えていないぜ!」
もうこれでもかってくらい最高のキメ顔で幸子さんに俺の想いを伝える。
「それは家に帰ってからゆっくり聞こう」
ニタァと嫌な笑みを浮かべながら未だ胸倉から手を離さない幸子はおかしいと僕は思う。
離してよ。
「まあ、私的にはあまり力を使って欲しくない。だが、まあ、多少ならば、許容範囲内だが、今朝のは明らかにやり過ぎだ」
「え? 俺なんかしたっけ?」
首を傾げる俺を見た瞬間、幸子さんは溜息を吐き、ゆっくりと胸倉から手を離した。
「何故今朝の事を覚えていないんだ、君は」
「すまんな、最近物忘れが激しくてな」
「お、おおう。本気で心配になって来た。え? 本当に忘れたん?」
俺はゆっくりと頷いた。
つか、エセ関西弁流行ってんの?
暫くの間、沈黙が続き。
「まじかー」
天を仰ぎながら、彼女はそう呟いた。
もちろん上は天井です。
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