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「ガアアアアアアアアアアアアア!!!?」
咆哮と共に、舞い上がりますは粉塵、轟音。
蕾膨らむ桜の木が、さわさわ不穏に揺れました。
ここは京都のとある山。
月明かりのみが支配する、人の気などない山奥です。
そこで叫び吠えるのは、怪しい色の刀を握る、異形の者でございました。
体長は、普通の人となんら変わりはありません。
ですが、ボロボロになった衣服から覗く皮膚は黒く染まり、おでこからは二本の禍々しい角が生えておりました。
それは紛れもない、鬼、でございます。
鬼は叫び声を上げ終えると、唸りながらゆっくりと、視線を前に向けました。
視線の先には一人の少女と、一匹の狐が居りました。
少女は不思議な恰好をしておりました。
白い小袖に緋色の袴。いわゆる巫女装束と呼ばれるものです。
一方、狐も存外変わった姿形をしております。体長三十センチほど。狐というには幾分丸くて小さいです。
色合いは、夕暮れに見かける夕日と空が混ざった時のような深い紫色。額には五芒星が、巫女の履く袴と同じ、緋色で描かれておりました。
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