序章 邂逅するは鬼と巫女

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
「ガアアアアアアアアアアアアア!!!?」  咆哮と共に、舞い上がりますは粉塵、轟音。  蕾膨らむ桜の木が、さわさわ不穏に揺れました。  ここは京都のとある山。  月明かりのみが支配する、人の気などない山奥です。  そこで叫び吠えるのは、怪しい色の刀を握る、異形の者でございました。  体長は、普通の人となんら変わりはありません。  ですが、ボロボロになった衣服から覗く皮膚は黒く染まり、おでこからは二本の禍々しい角が生えておりました。  それは紛れもない、鬼、でございます。  鬼は叫び声を上げ終えると、唸りながらゆっくりと、視線を前に向けました。  視線の先には一人の少女と、一匹の狐が居りました。  少女は不思議な恰好をしておりました。   白い小袖に緋色の袴。いわゆる巫女装束と呼ばれるものです。  一方、狐も存外変わった姿形をしております。体長三十センチほど。狐というには幾分丸くて小さいです。  色合いは、夕暮れに見かける夕日と空が混ざった時のような深い紫色。額には五芒星が、巫女の履く袴と同じ、緋色で描かれておりました。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!