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彼女が呟くのは、言霊。言葉に命を宿し、それを吹き込んでいるのです。
吹き込まれたものは形を成し、意味を成し、生を宿す。
彼女はそんな不思議な術を使役する、言霊師と呼ばれる術師の一族の一人、名は紀長麗奈。
紀長家の、現在当主代理でございます。
「こんよ、よくやった! これで最期じゃ!」
詠唱が終わりまして、麗奈がカッと目を見開きますと、札は淡い光を放ちました。
巫女が札を空に飛ばしますと、それは太陽のように一気に光輝き、辺り一面を照らし出しました。
「我が“天災”の名を思い知れ……天照ッ!!」
少女が勝ち誇ったように言ったと同時、鬼の頭上に光の輪が出来ました。
その中心に光が集まったと思った瞬間。
鬼と天の二方向に向かって、光が勢いよく放出されました。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!?」
空に向かって一直線に伸びる光の柱の中、鬼が今までにない雄叫びを上げて、苦しみもがきます。
その皮膚が一枚、また一枚と捲れ上がり、やがてすべてヒビ割れ砕け散りました。
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